<< 高島屋処刑場*prev
あんぱん >>*next
 

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 

ブタの貯金箱と大きな掃除機

ブタである。

 どこからどう見てもブタである。ブタに違いない。ブタだ。しかも、これは、貯金箱という機能がついたブタであるが、ブタには違いない。私は、このブタに、小学生の頃から金を貯めている。ブタに真珠。ブタに金。たまにお札を入れたりなんかしているので、かなりの金額が貯まっているはずだ。見た目はもちろんブタだが、中身もどんどん肥大している。ブタの貯金箱をこれほどまでにブタの貯金箱らしく育て上げたのは、私以外にいるであろうか。
 つい先ほど、ひょんなことから大変な事態に陥って、この愛らしいブタが憎らしく思え、破壊してしまった。ブタをブチ壊してしまったのだ。ブチ壊されたブタはタダのブタである。貯金できないブタはただのブタさ。

 私は、生まれてこの方失敗というものを経験したことがない。エリート街道まっしぐらで、その道には小石も砂もなかった。歩く床が敷かれていた。常人には乗れぬほどの早さである。そんな、エリートコースに揺られてきた私だが、幸せというものをひしひしと感じているわけではない。一般庶民には到底計り知れぬほどの贅沢をしている。もちろんそのために仕事もしている。健康には気を配り、食材にもこだわっている。だが、何か欠けているものがあるのだ。どんな人間にでも欲がある。その欲を満たせば、また次の欲が出てくる。人間とはそういうものだ。そして、例外なく私もそういうものだ。だから、何か欲しかったのだ。が、何が欲しいのかがはっきりしない。もやもやと鬱憤だけが溜まっていたのだ。

 毎日毎日会社に行き、特にノルマも目標もなく、やることもない。椅子に座っているだけで、あとは部下がやってくれる。私も昔はいろいろなことをした。様々な出来事があった。小さいながらも刺激のある毎日であった。それが今はどうだろう。このふかふかのまとわりつくような、仰々しい背もたれのついた椅子に、一日中ふんぞり返っているだけだ。部下たちは、用事がなければ話しかけて来ないし、昼食だって食うものが違うから私は一人で出かけるのだ。そんな退屈な毎日に嫌気が差していたのかもしれぬ。

 そこで私は、いつもの道、つまり歩く床人生から踏み外してみようと考えた。会社に行かず、安さが売りのスーパーに出かけ、不健康そうな色をした野菜を食べて、風呂にも入らず、家にも帰らず、夜の街を当てもなくぶらぶらするのだ。ただの家出少年のようであるが、私には魅力的な一日に思えたのだ。そして、その日以降、人生ががらりと変わるやも知れぬという期待さえ抱いていたのだ。

 翌日、夢の一日を過ごすことにした、昼過ぎに起き、昨日買っておいた、庶民的ジャージに着替える。顔は洗わず飯も食わずに外へ出た。周りの人々が、私の姿をみて何か陰口を言っているのではないかという気になる。視線を感じる。だが、実際は誰もジャージを着たオヤジを見ていないだろう。それぞれが何かを考え、退屈な毎日を過ごしているのだ。

 公園をダラダラと一周して、池で釣りをしている爺に声をかけたが、
「健康的ですな、ジョギングですか、それにしてはちと遅いかなぁ?」
という別段おもしろくもない返答が来たので、もごもごと会釈をしながら駅の方へ向かった。いつもは、右端の改札を使うのだが、今日は左端の改札に切符を通した。これだけでも、少し新鮮味がある。ホームでは、かなりの抵抗があったが、地面にしゃがみこんだ。三人がけのベンチに、一人座った紫色の毛を乗せた婆が訝しそうに見てきたが、婆もそうとう変な格好であった。電車に乗り、座席のど真ん中に腕を高く組んでずっしりと座ってみる。なぜか、強くなった気がするが、この時間、周りは爺婆ばかりなので、張り合いがない。普通電車はガタガタと、尻が痛くなりそうな振動を伝えながら、都会へと進む。ガラガラの車内には、ゆったりとした時間が流れていた。
author: junkie
思いつき | permalink | comments(0) | trackbacks(0)
 
 

スポンサーサイト

author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 
Comments:
Leave a comment:






TrackBack URL:
http://fragile-666.jugem.jp/trackback/468
TrackBacks:
 
 

Treat the junkie gently

11/10 明日で終わり。明日はポッキー。明日はお酒。
玉と砕けよ! けものがれ、俺らの猿と CUBE キューブ 文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)